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「カナダの友人・・Hさん」    その4

2015-10-20 ハリー古山  


 

そのC  「ジャパニーズ・レストラン事件」

東京の有名ホテル(O国ホテル)で「料理長をやっていた・・・」というHさんの言葉を信じてしまった2人のパートナー(共同経営者)は、Hさんと一緒に日本食レストランを始めようとしていた。 

最初にその話をHさんから聞かされた時・・・私は「えっ!Hさん本当にレストランなんか・・やる気?」って、あまり信じていなかった覚えがある。

その頃・・私はガーディナーとして日系2世カナダ人の会社で仕事をしていた。

この仕事はけっこう過酷で、早朝の暗い時間帯に家を出て・・周囲が何も見えなくなる時間まで毎日12時間以上もの重労働。
だから体はクタクタで・・さすがにHさんと話す余裕など全く残っていなかった。

でも・・私の知らない所では、いつの間にか「日本食レストランをオープンする!」・・という3人の計画が・・凄い速さで進んでいたらしい。

「本当にやる気なのかな〜?・・・出来るのかな〜?」

正直いって・・半信半疑!・・・いや、それ以上だった。

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ところが・・・である。

「3人寄れば・・何とか」で、とんとん拍子に事が進み・・あれよあれよという間にりっぱなレストランが出来上がってしまったではないか! 

「本当にやる気だったんだ!・・凄いな〜・・」 
(まずは、おめでとうー!)


開店初日から少なくても1週間はとても忙しくなるだろう・・・というHさんの予想で、私は「時間の都合がついたら」という条件で、皿洗いのお手伝いを頼まれてしまう。

日曜日が開店日だったので、私もなんとか都合をつけてHさんと仲間を応援・・という事で(遊びのつもりで)皿洗いに行く。 でも、これが甘かった〜。 

このレストランの名前は「レストラン・日本(ニッポン)」
(凄い名前にしたもんだ。私なら絶対に・・ないな!)

開店初日のこの日は・・ランチタイムを過ぎても一向に客足が衰えない大繁盛ぶりで、私は少なからず驚いていた。 

入口のドアが開き、次から次にお客さんが入ってくるので店の中はパニック状態。
慣れない初日の仕事に、キッチンの中も外も目の回る忙しさだった事に間違いはない・・・

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こんな中・・・キッチンの片隅で忙しく皿洗いをしている私に、突然Hさんが変なことを言う。

「コヤマくん・・あのさ〜・・・親子丼って、どんな物が入ってた〜?」 

「えっ!・・鶏肉と卵・・それにネギとか、野菜も入れるでしょ〜・・・」 

「あっ・・そう〜?・・・いま注文が入ったんだけどさ〜僕それ作ったことないんだよね・・じゃあ〜コヤマくん、悪いけど親子丼を作ってくれない?」ときた。 

「じょ・冗談でしょ〜??」

(知らないものまでメニューに入れるなんて、Hさん・・この店はどうなってるんだよ!
・・・料理長〜!)

ここに来て、まさか私が親子丼を作らなくちゃいけないとは・・まったく予定外の展開である。

皿洗いが、急きょ・・親子丼コックに変身! 





結局、この日は親子丼の注文が入るたびに私がその担当にされてしまったのです。 
(何てこった〜・・・話がちがうだろ〜)

でも幸いなことに、私は子供の時からお婆ちゃんが経営していたお店の中で親子丼やラーメンなどを自分で作っていたので、作り方だけは知っていた。
・・・でも、ド素人に味の自信なんて・・あるわけない〜!

「Hさん・・僕がキッチンの中で料理しているのを顔見知りのお客さんに見つかったら、ちょっとまずいよ!」と言ってもHさんは平気な顔・・・

こんな調子のレストランだったが、その当時は日本食レストランが街には2軒しかなかった事もあって開店当時は大当たりだったようである。

何しろ、ジャパニーズレストランでは「天ぷら」と「すき焼き」があれば・・それでやって行ける。
・・・そんな時代だったように思う。

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しかし・・・である。

「この店・・・本当にこのままやっていけるのかいな〜??」と私が心配している間に、見事につぶれてしまったではないか!!

1年も続かなかった・・・のではないかな?
(いや、たった6か月ほどしか・・・もたなかったような覚えもある)

詳しい事情は知らないが、急に大金が入ってくるようになるとパートナー間で金銭的なトラブルが生じたようで・・信頼関係も急に崩れたらしい。
(良くあるパターン! 人間は、欲張りですから・・)

そうこうしている間に・・・突然、Hさんがどこかに雲隠れをしてしまったという話を聞いた。

何かヤバイ事にでもなったのだろうか?
(そんな時・・Hさんはドロンぱ!・・すたこらさっさ〜と)

風の噂では、国境を越えてアメリカのニューヨークの方に逃げた・・・と言う。

さすが、Hさん・・逃げ足の速さはミサイル並みだった。

「Hさん・・何があったか知らないけれど・・・お達者で〜!!」




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