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JOY TO THE WORLD スペースシップの旅

 

 目的地までは、10時間もかかった。ハリーが「本当のスペースシップだったらあっという間なのにね。」とポツリと言った。操縦ご苦労様!
 しかし、私達の宇宙船の出発港バヒアデロサンジェルスに着いてみるとそこは、強風にあおられた海だった。沖合いでは、小さな竜巻が水煙を上げて遊んでいた。さー、出発の準備をしよう! え〜???まじですか?突然恐怖がこみあげてくる。しぶしぶシーカヤックを車から降ろして、パドルやライフジャケットなどの装備を点検する。
 その時ハリーと西やんが何となく目配せをしたように思った。「ちょっと風が強いな・・・、初心者のあさかわ君がいるから、今日はやめようかな」実は、ハリーのいつものウイットに富んだジョークだったのだ。ベテランでもこんな海には出ないよ。と西やんがあとで笑いながら言っていた。
 状況把握は、自分でしなくちゃ行けない。無理だと思ったら、スケジュールがどうであれ、計画を中止する決断をしなくちゃならない。なんてちょっと大げさに聞こえるけども、やっぱり自然をなめちゃいけない。
 翌日は、風も無く快晴だった。

 島に渡るために一番近いルートの海岸をベースキャンプにした。そこは、美しい花々が咲き乱れている楽園だった。朝日を浴びた彼女達の姿を見た時、言葉を失ってしまった。人々のざわめきを離れた世界には、別のインスピレーションが満ちていることを知ったのだ。
 前日の嵐の残り香のような大きな波の中へシーカヤックを漕ぎ出した。初めてのビッグウエーブ、波に飲み込まれないようにパドルを操つらなければならない。誰も助けには来てくれない。私と自然との戦いが始まった。船底の下には、真っ黒な海が広がっている。呼吸を整え、恐怖に震える心を静めようと努力する。本当の戦いは、自分自身との戦いだった。もう一度深呼吸して自分自身を見つめなおし「大丈夫、何も心配する事などないよ、すべて上手くいっている。」次の瞬間心は穏やかになった。そして知った。“海には恐怖など無かったのだ。”

 二人の叫ぶ声が聞こえてきた。「波に向かって漕ぐんだ!!」舟艇の横に波を受けたら、あっという間にチン(沈没)してしまうからだ。必死に漕いでやっとの思いで無人島に辿り着いた。

 安堵感が訪れた。ここは静かな入江、シーカヤックの波紋だけが波間にゆらいでいた。そして純白の乾いた砂が敷き詰められた美しいビーチ!そこには、イルカ達が小魚を追って遊んでいる音だけが響いていた。

 夜の帳が降りた頃、キャンプ・ファイヤーのカガリ火に照らされ酒を酌み交わしながら話しこむ二人をそっとしておいて、波に洗われている巨岩の上にそっと横たわると、私は満天の星々の輝きに呑みこまれていた。

 ここは未来(宇宙)へとつづくプラットフォーム、地球という惑星なのだ!!

by宇宙の旅人  

 


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